長崎地方裁判所 昭和61年(わ)343号 判決 1987年1月27日
本籍
香川県三豊郡高瀬町大字上麻三七七六番地
住居
長崎県下県郡豊玉町大字田一一〇九番地
真珠養殖業
原田雅次郎
明治三九年一〇月一一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官奥村雅弘出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金二〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、長崎県下県郡豊玉町大字田一一〇九番地において真珠養殖業を営む者であるが、自己の所得税を免れる目的をもって、右事業による売上げの一部を除外し、仮名の定期預金としてこれを預け入れ、あるいは、無期名割引債券を購入するなどの方法によって所得を秘匿したうえ、
第一 昭和五七年分の実際総所得金額が三九八七万六三一〇円、これに対する正規の所得税額が一五七二万八五〇〇円であったにもかかわらず、昭和五八年二月一七日、同県同郡厳原町大字桟原三八番地所在の所轄厳原税務署において、同税務署長に対し、自己の総所得金額が三三万九〇四〇円、これに対する所得税額が零円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により昭和五七年分の正規の所得税額との差額一七五二万八五〇〇円の所得税を免れ、
第二 昭和五八年分の実際総所得金額が四九二三万五九九九円、これに対する正規の所得税額が、二三九三万三二〇〇円であったにもかかわらず、昭和五九年三月三日、前記厳原税務署において、同税務署長に対し、自己の総所得金額が二六二万七一一七円、これに対する所得税額が二五万〇八〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により昭和五八年分の正規の所得税額との差額二三六八万二四〇〇円の所得税を免れ、
第三 昭和五九年分の実際所得金額が七二八七万六二四六円、これに対する正規の所得税額が三八二五万九二〇〇円であったにもかかわらず、昭和六〇年三月一四日、前記厳原税務署において、同税務署長に対し、自己の総所得金額が五六八万八八四三円、これに対する所得税額が七四万三〇〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により昭和五九年分の正規の所得税額との差額三七五一万六二〇〇円の所得税を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書二通(乙14、乙15)
一 被告人の福岡国税局収税官吏大蔵事務官に対する質問てん末書一二通(乙1ないし乙10、乙12、乙13)
一 被告人作成の上申書(乙11)
一 武富章(甲9)、大村祥二(甲12)、山下長左衛門(二通(甲13、甲14))、醍醐優(甲15)、波田武友(二通(甲16、甲18))、水谷淳一(二通(甲22、甲23))及び中島英敏(三通(甲24ないし甲26))の福岡国税局収税官吏大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 波田武友(甲17)、星野恒博(甲19)、廣瀬一男(甲20)及び有吉善基(甲21)各作成の各申述書
一 福岡国税局収税官吏大蔵事務官作成の査察官調査書二四通(甲27ないし甲50)
一 福岡国税局査察第二部門統括官作成の「修正申告書写の送付について」と題する書面の抄本(甲10)
一 福岡国税局調査査察部査察第二部門主査作成の「加算税、延滞税の納付状況について」と題する書面の抄本(甲11)
一 検察事務官作成の捜査報告書(甲51)
判示第一の事実について
一 福岡国税局収税官吏大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲2)
一 押収してある昭和五七年分の所得税の確定申告書一綴り(昭和六一年押第七二号の1)
判示第二の事実について
一 福岡国税局収税官吏大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲3)
一 押収してある昭和五八年分の所得税の確定申告書一綴り(同号の2)
判示第三の事実について
一 福岡国税局収税官吏大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲4)
一 押収してある昭和五九年分の所得税の確定申告書一綴り(同号の3)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、各所定刑中いずれも懲役刑及び罰金刑を選択し、なお罰金刑についてはいずれも情状により同条二項を適用してその免れた所得税の額に相当する金額以下とすることとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪所定の右罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金二〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、懲役刑については、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間その懲役刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
昭和六二年一月二八日
(裁判官 永松昭次郎)